2025-07-03

オランダ語、英語ができなくても大丈夫?オランダ現地体験談

オランダ人の英語力

オランダ人の英語力は世界的にもトップクラス。
国際的な英語力ランキング(EF English Proficiency Index)では何度も1位を獲得しています。
都市部や若い世代に関しては、ほぼネイティブ並みにスムーズに英語でやり取りできます。
一方、高齢世代や地方に行くと「英語はあまり得意じゃない。」という人に出会うこともあります。ただ、個人的な印象としては、年配の方でも英語をスラスラ話す人が多いです。

また、これだけ流暢なのにも関わらず、不完全な英語に対してもとても寛容です。率直さ・実利重視といった国民性や、小国で多様性や国際性に富む社会的背景から、普段からシンプルな英語表現でコミュニケーションを取ることが多いため、拙い英語にもイライラせずに朗らかな表情で耳を傾けてくれます。
時に、「 私たちもネイティブではないからね。」と言って笑顔で対応してくれます。

英語が通じる場面/通じない場面

日常生活では、英語が通じる場面が圧倒的に多いです。
というより、今まで英語が通じずオランダ語のみのコミュニケーションになったことはありません。
私はAmstelveenというAmsterdamの隣町に住んでいますが、公的機関、病院、銀行、スーパー、レストラン、学校など、英語だけで生活が成り立ちます。
実際に、水道局や税務署に電話した際も、最初はオランダ語ですが、「英語で話せますか?」と聞くと、すぐに英語で対応してくれました。

Amsterdamではむしろオランダ語よりも英語を聞くことが多いくらいです。レストランには英語メニューが常備されており、観光客も多いため英語での対応は一般的です。
ただし、道路標識や案内板は基本的にオランダ語。郵送物もオランダ語が中心ですが、公的機関からはオランダ語と英語の両方で届く場合もあります。

学校に関しては、公立校の授業はオランダ語ですが、ここでも触れたように、娘の学校には30カ国以上の子どもが通っており、授業はオランダ語ですが、子ども同士の会話は英語とオランダ語が入り混じっています。
先生方も親には英語で対応してくれるので、とても助かっています。


海外移住には英語力がどのくらい必要?

  • 生活:買い物や手続きは「中学英語+単語力」で可能。
  • 仕事:専門職やホワイトカラーは高い英語力が必要。現場系やブルーカラー職は英語よりオランダ語が必要なことも多い。自営なら自分で環境を選択できる。
  • 学校:国際学校なら英語でOK、公立校は基本オランダ語。

オランダでは、英語が話せれば生きていけるのですが、実際どのレベルが必要なのでしょうか。
ちなみに私は英語初心者の状態でオランダに来ました。到着当初に受けたTOEICは435点そこから半年で680点まで伸ばしましたが、「中級者の入り口」レベル。
まだまだ相手の言っていることが聞き取れなかったり、言いたいことを正確に伝えられなかったりする場面は多々あります。

それでも、スマホとAI翻訳のある現代では、英語が完璧でなくても暮らせてしまうのです。
まして、日本人家族で移住したため家庭内は日本語、仕事も今は妻と自営なので接客以外は日本語での会話です。
つまり、日常では、自分から積極的に外の社会と関わらなければ英語を使う機会は意外と少ないというのが現実です。


英語学習へのモチベーション/現地で伸ばす方法

「海外に行けば自然と英語が伸びる」と思われがちですが、私のような状況だと、実際には意識的に学習の時間を取らないと伸びません
私は、オランダに住みながら日本の英語コーチングのサービスを受けました。毎日ひたすら音読と単語学習をして、基本を身に付けた後に、おにぎり屋を始めてリアルな英会話に発展させました。

ここで多くの実践機会を作って、日々トライ&エラーを繰り返していきました。英語での会話ができる喜びとおにぎりが売れていく感動はひとしおでした。
ここでの課題感は、「会話がパターン化してしまうこと。」、「話が盛り上がった時にリスニングが追いつかず相槌ばかり打ってしまうこと」です。
特に、相槌ばかり打った後、「聞き返せばよかった。」と後悔することもしばしば。
やはり大切なのは、積極的に会話する姿勢と、その機会を自分でつくることです。

英語に対する心構え

進化生物学者の Terrence Deacon (1997) は「言語こそ人間を人間たらしめるシンボル機能」と述べており、私たち人類にとって「言語は単なるツールではなく、人間社会を成立させた根幹機能」です。
つまり、言語は人間にとって、とても重要な機能です。
一方で、移住して感じたのは、「完璧な英語(言語)が必要、というわけではない。」ということです。
最も大事なのは、伝えたいことを伝える能力が必要ということ。

  • 表情
  • ジェスチャー
  • モノゴトの知識
  • 積極性(会話の頻度)
  • 話題提供力=自己開示

言葉以外の要素をフルに使うことで、人との距離は驚くほど縮まります。表情やジェスチャーなどの重要性は皆さんも認識があることかと思います。
また、そもそもモノゴトの知識がないと英語以前に話すネタが乏しいということになります。

妻の「会話の頻度」、「話題提供力」に学ぶ

会話の頻度

私の妻は英語が得意ではありませんが、現地の人とすぐに仲良くなり、多くの方からサポートを受けています。
あるときは私の不在中に、同じアパートの年配のご夫婦に招かれ、夕食を一緒に楽しんでいました。
このご夫婦とはよく挨拶を交わし言葉を交わすのですが、妻はその度に一言二言話していました。
これは、言語の流暢さではなく、日々の小さな交流こそが、人間関係を築く鍵だと実感します。
実際、心理学で言われる「単純接触効果(ザイアンスの法則)」でも、人は1回の流暢な言葉よりも「頻繁な接触」に親近感を抱くとされています。

私はつい受け身になり「Yes」「OK」で会話を終えてしまうことが多いのですが、妻は「そういえばね!」「最近こんなことがあって」と軽やかに話題を投げます。うまく伝わらないこともありますが、気にせず笑って次へ進む。その姿勢が結果的に相手を笑顔にし、関係を自然に深めています。

これは「自己開示(self-disclosure)」という社会心理学の原理に通じます。自分の経験や考えを適度に話すことで、相手に親近感や好意を抱かれやすいのです。英語力が拙くても積極的に自己開示することで、会話は格段に広がるのだと実感しました。

話題提供力=自己開示

私は英会話になるとどうしても受け身になってしまいがちです。
「Yes, Exactly, OK...」で終わってしまうことも少なくありません。きっと同じような経験をされた方も多いのではないでしょうか。
自分から話題を振っていくのではなく、相手の話に合わせて、笑顔で相槌を打つというやつです。
一方、妻の会話を聞いていると、「話題提供力」がすごいと感じます。
聞いていて「それってこの後、どうやって英語で説明するの?!」と思うような話題を、次々と投げかけていくのです(笑)。
これは、どういうことなのか分析してみると、社会心理学で言われる「自己開示(self-disclosure)」の原理だと理解できました。

  • 自分の経験や考えを適度に話すことで、相手に親近感や好意を持たれやすい(Altman & Taylor, 1973 の「社会浸透理論」)。
  • 自己開示は「相手を楽しませよう、自分を知ってもらおう」という話題提供にも当たるので、受け身よりも会話が弾みやすくなる。

つまり、拙い英語力でも積極的に話題提供することで、それが自己開示に繋がり、相手に親近感や好意を持たれやすい。ということなんだろうと理解しました。
これは、日本人の英会話の心構えにもつながるところがあります。
間違いを恐れて受け身になる→ 「Yes, yes」「OK…」で終わってしまう。
その結果、相手からすると「あまり自分と話をしたくないのではないか。」と感じてしまう可能性があります。
妻を見ていると、「あ、そういえばね!」「最近こんなことがあってね」と軽やかに話題を投げていきます。もちろん、うまく伝わらないこともありますが、そんなときは気にせず笑って次の話題へ。結果的に相手の表情は緩み、関係も自然と深まっていくのです。

入り込むには現地の言語習得が大事

ここまで、オランダ生活は簡単な英語が話せれば大丈夫!生きていける。と書きました。
しかし、地域に入り込むためにはオランダ語の習得が欠かせません。 やはり日本人が日本語を話す外国人に好意を寄せたり心を開くのと同様に、母国語や現地語は「心」に届きます。
私はまだ英語すら拙いので、まずは英語学習が最優先ですが、オランダ語を習得できれば関係性が一気に深まり「ここが自分の第二のホームだ」と思える瞬間が増えるはずです。

せっかくオランダに住んでいるのだから、オランダ生活を豊かにするために、いつかはオランダ語を学ぼう。そんな思いを持ちながら、5歳の娘からオランダ語の指導を受けています。

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2025-07-03

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オランダ人の英語力

オランダ人の英語力は世界的にもトップクラス。
国際的な英語力ランキング(EF English Proficiency Index)では何度も1位を獲得しています。
都市部や若い世代に関しては、ほぼネイティブ並みにスムーズに英語でやり取りできます。
一方、高齢世代や地方に行くと「英語はあまり得意じゃない。」という人に出会うこともあります。ただ、個人的な印象としては、年配の方でも英語をスラスラ話す人が多いです。

また、これだけ流暢なのにも関わらず、不完全な英語に対してもとても寛容です。率直さ・実利重視といった国民性や、小国で多様性や国際性に富む社会的背景から、普段からシンプルな英語表現でコミュニケーションを取ることが多いため、拙い英語にもイライラせずに朗らかな表情で耳を傾けてくれます。
時に、「 私たちもネイティブではないからね。」と言って笑顔で対応してくれます。

英語が通じる場面/通じない場面

日常生活では、英語が通じる場面が圧倒的に多いです。
というより、今まで英語が通じずオランダ語のみのコミュニケーションになったことはありません。
私はAmstelveenというAmsterdamの隣町に住んでいますが、公的機関、病院、銀行、スーパー、レストラン、学校など、英語だけで生活が成り立ちます。
実際に、水道局や税務署に電話した際も、最初はオランダ語ですが、「英語で話せますか?」と聞くと、すぐに英語で対応してくれました。

Amsterdamではむしろオランダ語よりも英語を聞くことが多いくらいです。レストランには英語メニューが常備されており、観光客も多いため英語での対応は一般的です。
ただし、道路標識や案内板は基本的にオランダ語。郵送物もオランダ語が中心ですが、公的機関からはオランダ語と英語の両方で届く場合もあります。

学校に関しては、公立校の授業はオランダ語ですが、ここでも触れたように、娘の学校には30カ国以上の子どもが通っており、授業はオランダ語ですが、子ども同士の会話は英語とオランダ語が入り混じっています。
先生方も親には英語で対応してくれるので、とても助かっています。


海外移住には英語力がどのくらい必要?

  • 生活:買い物や手続きは「中学英語+単語力」で可能。
  • 仕事:専門職やホワイトカラーは高い英語力が必要。現場系やブルーカラー職は英語よりオランダ語が必要なことも多い。自営なら自分で環境を選択できる。
  • 学校:国際学校なら英語でOK、公立校は基本オランダ語。

オランダでは、英語が話せれば生きていけるのですが、実際どのレベルが必要なのでしょうか。
ちなみに私は英語初心者の状態でオランダに来ました。到着当初に受けたTOEICは435点そこから半年で680点まで伸ばしましたが、「中級者の入り口」レベル。
まだまだ相手の言っていることが聞き取れなかったり、言いたいことを正確に伝えられなかったりする場面は多々あります。

それでも、スマホとAI翻訳のある現代では、英語が完璧でなくても暮らせてしまうのです。
まして、日本人家族で移住したため家庭内は日本語、仕事も今は妻と自営なので接客以外は日本語での会話です。
つまり、日常では、自分から積極的に外の社会と関わらなければ英語を使う機会は意外と少ないというのが現実です。


英語学習へのモチベーション/現地で伸ばす方法

「海外に行けば自然と英語が伸びる」と思われがちですが、私のような状況だと、実際には意識的に学習の時間を取らないと伸びません
私は、オランダに住みながら日本の英語コーチングのサービスを受けました。毎日ひたすら音読と単語学習をして、基本を身に付けた後に、おにぎり屋を始めてリアルな英会話に発展させました。

ここで多くの実践機会を作って、日々トライ&エラーを繰り返していきました。英語での会話ができる喜びとおにぎりが売れていく感動はひとしおでした。
ここでの課題感は、「会話がパターン化してしまうこと。」、「話が盛り上がった時にリスニングが追いつかず相槌ばかり打ってしまうこと」です。
特に、相槌ばかり打った後、「聞き返せばよかった。」と後悔することもしばしば。
やはり大切なのは、積極的に会話する姿勢と、その機会を自分でつくることです。

英語に対する心構え

進化生物学者の Terrence Deacon (1997) は「言語こそ人間を人間たらしめるシンボル機能」と述べており、私たち人類にとって「言語は単なるツールではなく、人間社会を成立させた根幹機能」です。
つまり、言語は人間にとって、とても重要な機能です。
一方で、移住して感じたのは、「完璧な英語(言語)が必要、というわけではない。」ということです。
最も大事なのは、伝えたいことを伝える能力が必要ということ。

  • 表情
  • ジェスチャー
  • モノゴトの知識
  • 積極性(会話の頻度)
  • 話題提供力=自己開示

言葉以外の要素をフルに使うことで、人との距離は驚くほど縮まります。表情やジェスチャーなどの重要性は皆さんも認識があることかと思います。
また、そもそもモノゴトの知識がないと英語以前に話すネタが乏しいということになります。

妻の「会話の頻度」、「話題提供力」に学ぶ

会話の頻度

私の妻は英語が得意ではありませんが、現地の人とすぐに仲良くなり、多くの方からサポートを受けています。
あるときは私の不在中に、同じアパートの年配のご夫婦に招かれ、夕食を一緒に楽しんでいました。
このご夫婦とはよく挨拶を交わし言葉を交わすのですが、妻はその度に一言二言話していました。
これは、言語の流暢さではなく、日々の小さな交流こそが、人間関係を築く鍵だと実感します。
実際、心理学で言われる「単純接触効果(ザイアンスの法則)」でも、人は1回の流暢な言葉よりも「頻繁な接触」に親近感を抱くとされています。

私はつい受け身になり「Yes」「OK」で会話を終えてしまうことが多いのですが、妻は「そういえばね!」「最近こんなことがあって」と軽やかに話題を投げます。うまく伝わらないこともありますが、気にせず笑って次へ進む。その姿勢が結果的に相手を笑顔にし、関係を自然に深めています。

これは「自己開示(self-disclosure)」という社会心理学の原理に通じます。自分の経験や考えを適度に話すことで、相手に親近感や好意を抱かれやすいのです。英語力が拙くても積極的に自己開示することで、会話は格段に広がるのだと実感しました。

話題提供力=自己開示

私は英会話になるとどうしても受け身になってしまいがちです。
「Yes, Exactly, OK...」で終わってしまうことも少なくありません。きっと同じような経験をされた方も多いのではないでしょうか。
自分から話題を振っていくのではなく、相手の話に合わせて、笑顔で相槌を打つというやつです。
一方、妻の会話を聞いていると、「話題提供力」がすごいと感じます。
聞いていて「それってこの後、どうやって英語で説明するの?!」と思うような話題を、次々と投げかけていくのです(笑)。
これは、どういうことなのか分析してみると、社会心理学で言われる「自己開示(self-disclosure)」の原理だと理解できました。

  • 自分の経験や考えを適度に話すことで、相手に親近感や好意を持たれやすい(Altman & Taylor, 1973 の「社会浸透理論」)。
  • 自己開示は「相手を楽しませよう、自分を知ってもらおう」という話題提供にも当たるので、受け身よりも会話が弾みやすくなる。

つまり、拙い英語力でも積極的に話題提供することで、それが自己開示に繋がり、相手に親近感や好意を持たれやすい。ということなんだろうと理解しました。
これは、日本人の英会話の心構えにもつながるところがあります。
間違いを恐れて受け身になる→ 「Yes, yes」「OK…」で終わってしまう。
その結果、相手からすると「あまり自分と話をしたくないのではないか。」と感じてしまう可能性があります。
妻を見ていると、「あ、そういえばね!」「最近こんなことがあってね」と軽やかに話題を投げていきます。もちろん、うまく伝わらないこともありますが、そんなときは気にせず笑って次の話題へ。結果的に相手の表情は緩み、関係も自然と深まっていくのです。

入り込むには現地の言語習得が大事

ここまで、オランダ生活は簡単な英語が話せれば大丈夫!生きていける。と書きました。
しかし、地域に入り込むためにはオランダ語の習得が欠かせません。 やはり日本人が日本語を話す外国人に好意を寄せたり心を開くのと同様に、母国語や現地語は「心」に届きます。
私はまだ英語すら拙いので、まずは英語学習が最優先ですが、オランダ語を習得できれば関係性が一気に深まり「ここが自分の第二のホームだ」と思える瞬間が増えるはずです。

せっかくオランダに住んでいるのだから、オランダ生活を豊かにするために、いつかはオランダ語を学ぼう。そんな思いを持ちながら、5歳の娘からオランダ語の指導を受けています。

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